

2026.05.28 採用
育成就労制度とは?採用担当者が押さえておくべき知識を詳しく解説

近年、外国人材の受け入れをめぐる制度は大きく見直されつつあります。その中でも注目されているのが2027年4月に施行される「 育成就労制度 」です。技能実習制度に代わる新たな枠組みとして議論が進められており、採用活動に関わる人事担当者にとっても無視できないテーマとなっています。
しかし、「名前は聞いたことがあるけど内容がよく分からない」「自社の採用にどのような影響があるのか見えていない」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、育成就労制度の概要や従来の制度との違い、採用実務への影響、さらには対応のポイントまで解説します。
育成就労制度とは何か?基礎知識について解説

最初に育成就労制度の概要と設立の背景、特徴について解説します。
(1)育成就労制度とは
育成就労制度 は、特定技能(1号水準)を持つ人材の育成と人材確保を目的とした制度です。原則として3年間の在留期間の中で、特定技能1号の水準まで育成することを目指します。
特定技能とは、介護・宿泊・外食など特定産業分野で一定の技能を持つ外国人を対象とした在留資格です。在留期間は通算で最大5年まで更新可能です。
技能検定試験基礎級等および、一定水準以上の日本語能力に係る試験への合格により、認定されます。
(2)育成就労制度設立の背景
制度設立の最大の目的は、外国人材にとって魅力のある制度を整え、「日本で働きたい」と外国人から選ばれる国へと変わることです。
技能実習制度は「人材育成による国際貢献」を目的としていますが、実態としては労働力確保の側面が強く、制度目的と現場運用の乖離が長年指摘されてきました。
また、転職の制限や労働環境の問題などの課題により、外国人材にとって魅力を感じにくい部分があり、制度の見直しが求められてきました。
こうした背景を受けて、育成就労制度では目的を「人材確保と人材育成」に転換。外国人を実習生ではなく、労働者として受け入れることで、適切な待遇と権利保護を実現することになりました。
(3)育成就労制度の特徴
育成就労制度の特徴は、育成と労働力確保の両立を明確に目指している点です。従来のように建前としての育成ではなく、一定期間の就労を通じてスキルを習得し、その後のキャリアにもつながる設計です。
具体的には、一定期間の育成就労を経て、在留期間の上限のない、より高度な在留資格である「特定技能」への移行を可能にする仕組みが設けられています。これにより、短期的な労働力としてではなく、中長期的に活躍する人材として外国人を受け入れる流れが強まると考えられます。
育成就労制度と技能実習制度の違いを解説

制度の理解を深めるためには、従来の技能実習制度との違いを押さえることが欠かせません。主な違いを表にまとめました。
| 技能実習制度 | 育成就労制度 | |
| 在留期間 | 最長5年 | 最長3年 |
| 転籍(転職) | 原則不可 | 一定条件を満たせば可能 |
| 日本語要件 | 入国時の要件なし | 入国時N5相当 ※特定技能移行時N4相当 ※入国前100時間以上の講習が義務 ・費用は企業負担 |
| 受け入れ人数枠 | 号ごとに1年間の上限あり | 3年間の通算上限あり |
| 送出費用 | 実習生の自己負担額が大きい | 渡航費・手数料は企業負担 本人の負担額に上限設定 |
| キャリアパス | 帰国が前提 | 特定技能への移行・長期就労 |
技能実習制度からの変更点のうち、特に重要な2点について解説します。
(1)転籍(転職)制限の緩和
技能実習制度との大きな違いの一つが、転籍の扱いです。従来は原則として同一企業での就労が求められていましたが、育成就労制度では一定条件のもとで転籍が認められます。
技能実習制度では、受け入れ企業の倒産や暴力など「やむを得ない事情」がある場合のみ、転籍が認められていました。しかし、基準があいまいで手続きも煩雑なため、失踪する実習生が多く、社会問題となっていました。
育成就労制度では、同一の受入れ機関で*分野別の制限期間(1〜2年)を超えて就労し、技能・日本語能力(A1〜A2相当)が一定水準に達していることに加え、転籍先が「優良な育成就労実施者」であること、民間職業紹介事業者を利用しないことなど、計7つの要件をすべて満たしていれば、本人の意思での転籍が認められます。
外国人材の利益という観点では大きな前進といえますが、企業側にとっては人材流出のリスクが高まることを意味します。そのため、採用して終わりではなく、定着を前提としたマネジメントがより重要になります。
(2)特定技能制度への移行
育成就労制度は、既存の特定技能制度への移行も意識されています。キャリアパスに応じた技能や日本語能力の確認など、移行に向けた一定の基準が設けられました。
これにより、企業としては単なる入口としての採用ではなく、長期雇用を見据えた人材戦略を描く必要があります。採用段階からキャリアパスを提示できるかどうかが、競争力に直結する可能性があります。
育成就労制度で何が変わるの?採用実務への影響と対応のポイント

育成就労制度への移行は、採用活動の進め方そのものにも影響を及ぼします。ここでは、人事・採用担当者が具体的に押さえておくべきポイントを整理します。
(1)「採用すればよい」から「選ばれる企業へ」
転籍が可能になることで、外国人材にとって企業選択の自由度が高まります。これにより、企業間の人材獲得競争がより激しくなります。
従来は制度上の制約によって人材が定着していた側面もありましたが、今後は職場環境や待遇、教育体制などが直接的に評価されるようになります。そのため、採用活動においても「なぜ自社で働くのか」を明確に伝える必要があります。
特に重要なのが、企業としてどのような成長機会を提供できるのかの提示です。
例えば、育成プログラムの内容やキャリアパス、実際に活躍している社員の事例などを発信することで、求職者に安心感と魅力を伝えることができます。
(2)育成体制の整備が採用力に直結
制度の名称にもある通り、「育成」は重要なキーワードです。単に人手不足を補うためではなく、スキル習得を前提とした受け入れが求められます。
具体的には、業務マニュアルの整備や教育担当者の配置、チェックリストによる業務習熟度の可視化、日本語学習の支援などが挙げられます。
これらはコストと捉えられがちですが、長期的には定着率の向上や生産性の改善につながります。
結果として、採用コスト全体の最適化にも寄与するため、戦略的に取り組む価値があります。
(3)定着支援の仕組みづくり
転籍が可能になる環境では、採用後の定着支援がこれまで以上に重要になります。単に業務を教えるだけではなく、生活面のサポートや相談しやすい環境づくりが求められます。
例えば、母国語で相談できる窓口の設置や、文化の違いを理解するための社内研修などが有効です。こうした取り組みは離職防止につながるだけでなく、職場全体のコミュニケーション改善にもつながります。
(4)採用要件の見直しと設計
育成を前提とした制度である以上、即戦力のみを求める採用基準ではミスマッチが生じる可能性があります。ポテンシャルや学習意欲を重視した選考へとシフトすることも重要です。
また、入社後にどのようなスキルを習得してもらうのかを明確にし、それに応じた評価制度を設計することで、本人の成長と自社の希望を一致させやすくなります。
(5)外部パートナーの活用
育成就労制度の理解や運用には専門的な知識が求められるため、人材紹介会社や登録支援機関など外部パートナーの活用も有効です。
特に初めて外国人採用に取り組む企業にとっては、制度対応の負担を軽減しつつ、適切な受け入れ体制を構築する手段となります。自社だけで完結させるのではなく、外部の知見を取り入れることも戦略のひとつといえるでしょう。
まとめ

育成就労制度は、2027年4月に技能実習制度に代わって施行される新制度です。「人材確保と育成」を明確な目的とし、転籍の条件付き解禁や特定技能への移行促進が大きな特徴です。
「選ばれる職場」づくりが採用の成功を大きく左右するため、育成体制の整備・定着支援・キャリアパスの提示などの対策が欠かせません。専門の知見を持つ人材紹介会社の活用も効果的です。
エリメントHRCでは、企業ごとの採用課題や受け入れ体制に合わせた採用に関してのご提案を行っています。早期から人材確保・定着に向けた体制づくりを進めたい企業様は、ぜひ一度ご相談ください。