

2026.02.17 採用
人手不足はなぜ起きるのか?その原因と企業が取るべき対策

近年、多くの企業が人手不足に悩まされています。求人を出しても応募が集まらない、採用してもすぐに離職してしまうといった課題を抱える企業は少なくありません。
この記事では、採用・人事担当者向けに人手不足が起きている背景や構造的な原因を解説し、さらに効果的な採用・定着施策も紹介します。
人手不足の現状とは?業界別の課題についても解説

最初に、人手不足の現状について解説します。
(1)全体的な傾向
総務省統計局が発表した「労働力調査結果(基本集計)2024年平均結果」によると、2024年の就業者数は6,781万人で、前年と比べ、34万人増加しています。
しかし、日本商工会議所・東京商工会議所が2024年9月に発表した「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」では、「人手が不足している」と回答した企業は、63.0%にのぼります。
働く人の総数は増えているのにも関わらず、企業が求める人材を確保することが難しくなっており、人材獲得競争が激化している状態です。
特に知名度や待遇面で大企業に劣る中小企業においては、競争に苦戦し、必要な人材を採用できないケースが増えています。
応募者を集めること自体が困難で、採用活動に多大な時間とコストをかけても成果が出ないケースも少なくありません。また、採用できたとしても、より条件の良い企業への転職を理由に早期離職されてしまうケースも見られます。
人手不足は単に「人が足りない」だけでなく、「求めるスキルを持った人材が見つからない」という質的な問題も含んでいます。企業が必要とする専門知識や経験を持つ人材と、求職者が持つスキルとのミスマッチが生じており、募集しても適切な人材に出会えないという悩みを抱える企業が増えています。
企業は妥協して採用するか、採用基準を維持して人手不足に耐えるかという難しい選択を迫られているのが現状です。
(2)業界別の状況
業界別に見ると、人手不足の深刻度には大きな差があります。
最も深刻なのが、運輸業です。「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」
によると83.3%、つまり8割超の企業が人手不足だと回答しています。ECの急成長により配送需要は増加していますが、長時間労働や不規則な勤務形態から若手の採用が難しく、ドライバーの高齢化が進んでいるためです。
建設業についても、人手不足だと回答した企業が79.2%と、こちらも8割近くの水準となっており、技術者や現場作業員の不足が慢性化しています。高齢化による退職者の増加と、労働環境が厳しいというイメージから若年層の業界離れが重なり、構造的な問題となっています。
飲食・宿泊業界では、他の産業と比べて離職率が高い傾向にあり、営業時間の短縮や休業日の増加を余儀なくされる事業者も少なくありません。
医療業界においても、医師や看護師をはじめとする医療従事者の不足が続いています。資格が必要な専門職であることに加え、夜勤や当直などの勤務形態も離職につながっています。
IT業界では、デジタル化の加速により需要が急増していますが、専門スキルを持つ人材の育成が追いつかず、慢性的な人材不足が続いています。
このような深刻な人手不足が続くことで、社会を支えるサービスが維持できなくなる可能性が危惧されています。
https://www.jcci.or.jp/file/sangyo2/202409/20240905_diversity_release.pdf
なぜ人手不足に?少子高齢化などの背景について解説

なぜ人手不足がこれほどまでに深刻化しているのか、背景について解説します。
(1)少子高齢化
人手不足の最も大きな要因は、少子高齢化による生産年齢人口の減少です。日本の総人口は減少に転じており、特に15歳から64歳までの生産年齢人口は急速に減少しています。
女性の社会進出促進や高齢者の就業継続などによって、現在は就業者が増加傾向にあります。しかし、今後も生産年齢人口の減少傾向は続くと予測されており、労働力の絶対数が減少することは避けられない状況です。
(2)働き方や価値観の変化
働き方や価値観の変化も、人手不足に大きく影響しています。現在では転職が一般的になり、一つの会社で長く働くことに重きを置かない人が増えています。
また、ワークライフバランスを重視する傾向が強まり、長時間労働や休日出勤が多い職場は敬遠されるようになりました。特に若年層では、給与の高さよりも働きやすさや自己実現を重視する傾向が顕著です。
その結果、職場環境の魅力に乏しい企業は、人材が定着せず、人手不足が深刻化しています。
(3)人手の需要と供給のミスマッチ
厚生労働省が発表した「一般職業紹介状況(令和7年11月分)」によると、有効求人倍率は1.18倍でした。有効求人倍率とは、求職者1人に対し求人が何件あるかを示す指標です。一見すると、需要と供給がマッチしているように見えますが、職種や業種による差が大きいのが課題です。
たとえば一般事務従事者の有効求人倍率が0.33倍と、求人1件に対して複数の応募が集まりやすく、採用そのものは比較的行いやすい状況です。
これに対して、鉄筋の組立や型枠の設置を担う建設躯体工事従事者は有効求人倍率が8.04倍と、1つの求人に対して応募者がほとんどいないケースも珍しくありません。
(4)地方の人材流出
地方での人手不足は、より深刻な状況です。若年層の都市部への流出が続いており、地方企業は採用活動そのものが困難になっていることが背景にあります。
特に企業が求める経験・スキルを持つ専門人材が不足しており、製造業を中心に技術継承が難しく、優れた技術を持ちながらも廃業を余儀なくされている企業も少なくありません。
人手不足を解消するために!企業がすべき対策とは

人手不足を解消するには、採用活動の見直しと定着率の向上という両面からのアプローチが必要です。
(1)採用活動の見直し
従来の採用手法を見直し、より効果的な方法を取り入れることが求められます。
なかでも重要なのが、採用手法の多様化です。求人サイトやハローワークといった従来の方法だけでなく、人材紹介会社の活用、SNSを使った情報発信、リファラル採用(従業員からの紹介)の導入など、複数のチャネルを組み合わせることで、より多くの候補者にアプローチできます。
特に人材紹介会社は、企業が求める条件に合った人材を効率的に探してくれるため、採用活動の負担を軽減しながら質の高い人材を獲得できます。
採用基準の見直しも効果的です。経験者採用にこだわりすぎず、未経験者やポテンシャル採用を積極的に行うことで、採用の間口を広げられます。シニア人材や主婦層、外国人材など、これまで採用対象としていなかった層にも目を向けることで、選択肢を広げましょう。
(2)定着率の向上
せっかく採用した人材が早期に離職してしまえば、採用コストが無駄になるだけでなく、残った社員の負担も増加します。
労働条件の改善は、最も重要な施策のひとつです。給与水準が同業他社や地域の相場と比べて適切か定期的に確認し、必要に応じて見直しましょう。
残業時間の削減や休暇取得の促進は、従業員の満足度に直結します。フレックスタイム制度やリモートワーク制度の導入など、柔軟な働き方ができる環境を整えるのも効果的です。
また、人間関係の良好な職場は、離職率が低い傾向にあります。コミュニケーションを活性化させる取り組みや、ハラスメント防止の徹底など、安心して働ける職場づくりに力を入れましょう。
その他、研修制度の充実や資格取得の支援など社員の成長を後押しする仕組みの整備、メンター制度の導入をはじめとする新入社員に対する手厚いフォローも、定着率向上につながります。
まとめ

人手不足は少子高齢化による生産年齢人口の減少、働き方や価値観の変化、需給のミスマッチ、地方からの人材流出など、構造的な要因が複雑に絡み合って生じています。
業界によって深刻度は異なりますが、運輸業や建設業では約8割の企業が人手不足に直面しており、社会インフラの維持が懸念されています。
この課題に対応するには、採用手法の多様化や採用基準の見直しによって採用の間口を広げるとともに、労働条件の改善や職場環境の整備によって定着率を高める取り組みが欠かせません。採用と定着の両面から総合的に対策をすることで、事業の成長・維持に必要な人材を確保できます。